青カビ王子こと伊勢昇平さん
北海道江丹別(えたんべつ)で家族経営を行っている伊勢ファーム
その広大な敷地で大切に育てる牛が出してくれる牛乳を使ってブルーチーズを作っている。
王子が作るブルーチーズ「江丹別の青いチーズ」はたった一人の職人による手作りにもかかわらずANAとJALの国際線ファーストクラスメニューに採用されテレビやイベントにも”引っ張りだこ”。
公式通販サイトでは人気で最長7ヶ月待ちになるほど。
そんな日本中、いや世界中から待ち望まれるブルーチーズだが、作り始めたきっかけは恩師からの一言だった。
小さい頃は江丹別が好きではなかった王子。
父の牧場の仕事
厳しい自然環境
人もいない
遊ぶところもなく
良いところは一つもないと感じていた。
都会に出て通っていた高校の同級生には生活の不便さをからかわれ、江丹別が大嫌いになった時期もあった。
そこで
「江丹別を飛び出し世界に出たい、だったら英語を学ぼう」と高校2年生の時に英会話を習い始めた。
ところが、その熱血先生の一言が王子の人生に大きな影響を与えた。
「お前のオヤジは牛乳搾ってるんだからその牛乳で世界一のチーズ作ることも世界に出て行くことになる」
その言葉を耳にした瞬間、背筋に電撃が走りチーズ作りの道に進むことを決意した。
その後
帯広畜産大学に進学してチーズ作りの基礎を学び
卒業後はチーズ作りが盛んな十勝のチーズ工房で住み込み修行。
24歳で実家に戻り、自分の工房を立ち上げ
試行錯誤の末に作り出したのがブルーチーズ「江丹別の青いチーズ」だった。
チーズの中でもブルーチーズを選んだのは、夏は暑くて冬は寒いという特徴的な江丹別の気候がブルーチーズの一大産地フランスのオーベルニュと似ており江丹別でも作れるのではと考えたからだった。
ブルーチーズを作った経験はなかったが作ってみるとすぐにうまくいき、作ったそばから売れて行った。
「こんな美味しいブルーチーズが日本でついにできた」といろんなメディアでも話題に。
こうして青カビ王子が誕生。
チーズを作れば即完売状態が続いた。
そんな好調だったチーズ作りに、ある日大事件が起きた。
突然、青カビが生えなくなったのだ。
泣く泣く数百キロ分のチーズを廃棄することになり、どんなに試しても改善されることはなかった。
原因もわからず、このままでは世界一のチーズが作れないと考えた王子は世界一のチーズを作るべく本場フランスオーベルニュに修行に出た。
ところがわずか2ヶ月でインターン契約は打ち切り。
それでもめげることなく飛び込みでブルーチーズ生産者を周り、ブルーチーズの作り方を教わった。
「美味しいチーズを作る技術を学べないうちは生きて日本に帰れない」という覚悟で。
フランス修行の末
本場の伝統的製法と江丹別の気候、牛乳に合わせた青カビ王子独自のアレンジから生み出されるこのブルーチーズ。
今や入手困難となり「幻のチーズ」と呼ばれるまでになった。
次なる夢はこの江丹別を世界一の村にすること。
- 世界一のチーズ
- 世界一の村
を作りたいという想いで日々活動し
最近では江丹別に関わる人たちがどんどん増え、彼らの夢が叶うことも自分の夢になりつつある。
そしてこの江丹別をきっかけにどんどんそういう夢が広がって欲しいと語ってくれた。
王子の呼びかけで移住してきた夫婦が営むパン屋やフレンチレストランは行列になる人気店となっている。