イカ王子こと鈴木良太さん
”生よりおいしい加工品”をモットーに
宮古で水揚げされるイカを中心とした魚本来の美味しさ、産地の想いが詰まった商品を製造販売する共和水産株式会社の代表取締役専務を務める。
二代目として奮闘する王子だが、以前は”この街はどこを歩いても知り合いばかりで生きづらい”と感じ、地元を離れ仙台の繁華街にあるダイニングバーに勤めていた。
ところが24歳の時に父の会社の後継問題が話題に上がり、当時「フラフラしてるし、商売っ気もあるからやらせてみよう」と家族から連絡があったのがきっかけで地元に戻った。
しかし、この頃はまだ都会のカッコよさに対する漠然とした憧れが残り、夢や希望を持ってやりたいことも毎日変わるような日々だった。
そのため、地元の宮古で働いていても心ここにあらずの状態で日々を過ごした。
そんな鈴木さんがかわるきっかけになったのが東日本大震災だった。
家屋が崩壊し、車が至る所に乗り上げ、これまで当たり前にあった風景がむちゃくちゃになっていた。
会社では原料や商品などおよそ1億3000万円の損害を受けることとなった。
午後2時46分に起こったあの一瞬の出来事で、つまらなく仕事をしていた鈴木さんのすべてが変わった。
それを目の当たりにした鈴木さんは、生きること、仕事ができることの価値を改めて思い知り、この街の復興に役立ちたいと強く思うようになった。
そしてこの震災のあった年、29歳の鈴木さんは会社の代表取締役専務に就任。
街を盛り上げようと覚悟を決めるため、自身で「イカ王子」と名付けて活動を始めた。
まずは会社のHPを立ち上げ、「イカ王子」としてブログを開始。
最初はキャラ作りなど試行錯誤。
トレードマークの王冠とTシャツを持参して各地を回った。
そうした甲斐もあり王子がプロデュースする商品はおいしいと徐々に知名度が上がり、ヒット商品を次々に生み出してきた。
「いかそうめん」
「王子が作った真イカぶっかけ丼」
「王子のぜいたく至福のタラフライ」
また、地元の水産業の若手で「宮古チーム漁火(いさりび)」を結成して、海外進出も進めてきた。
チームでは震災前の売上の3倍以上に成長。
さらにネット通販サイト「港の百貨店」をオープンするなど宮古の水産業を盛り上げている。
今では「王子のタラフライ」が地元のソウルフードになりつつあり
震災があった宮古市、この宮古の復興と一緒に地域の海産物を発信したいという想いでイカ王子は日々、活動している。
今では、地域おこしや教育、人材育成の分野まで活動の幅を広げ
「宮古を水産の街」だと全国のみなさんに認知していただけるように尽力している。